当財団第11期奨学生の角谷春奈さん(愛知県/名古屋音楽大学1年)を、2025年9月にイタリアで行われたエットーレ・ポッツォーリ国際ピアノコンクールに派遣しました。角谷さんから、大変詳しいレポートをいただきましたので、ご紹介します。
昨年、ミラノ派遣オーディションに参加した際に黒田亜樹先生よりお勧めいただき、2025年9月20日(土)から9月28日(日)までイタリア・セレーニョで開催された「第34回エットーレ・ポッツォーリ国際ピアノコンクール」に出場いたしました。コンクールへのお申し込みから渡航中の宿泊、ご指導に至るまで多大なるサポートを賜り、安心してコンクールに臨むことができました。心より感謝申し上げます。
本コンクールは1959年に創設され、2023年には国際音楽コンクール世界連盟(WFIMC)に加盟した、長い歴史と格式を誇るコンクールです。イタリアの作曲家エットーレ・ポッツォーリの名を冠し、そのエチュードが必須課題となっていることが特徴で、記念すべき第1回優勝者は巨匠マウリツィオ・ポリーニでした。ポッツォーリのエチュードは、現在でもイタリアの多くの子ども達がピアノ学習の中で親しんでいるそうです。
会場となったセレーニョは、ミラノから電車で北へ約20分の美しい街で、石造りの建物が並ぶ街並はどこを歩いても絵になるほど。歴史と温かさを感じる空気の中で過ごす日々は、とても心豊かなものでした。


初日はオープニングコンサートと演奏順の抽選会が行われ、コンテスタントや関係者に加えて多くの地元の方々も訪れ、華やかで祝祭的な雰囲気に包まれていました。
オープニングではオーケストラによる演奏が数曲披露されました。
コンクールは一次・二次予選がそれぞれ2日間づつ、続いてセミファイナル、オーケストラとのリハーサル、そしてファイナルという流れで進行しました。


練習室は毎朝、コンクール事務局にて割り当てられ、ボランティアの方々のご自宅や音楽学校の教室など、グランドピアノやアップライトピアノを備えたさまざまな環境を提供していただきました。皆さんがとても親切で温かく迎えてくださり、リラックスして十分な練習ができました。練習の合間にお茶やお食事をご一緒したりお話を交わしたりと、心温まる時間を過ごすことができました。
本番のピアノはファツィオリで、演奏前には10分間の試弾時間が設けられていました。


一次予選は平均律やエチュードを含む自由曲(20分以内)、二次予選ではベートーヴェンのソナタとポッツォーリのエチュード3曲のを含む自由プログラム(40分以内)が課題でした。
ポッツォーリのエチュードは初めての挑戦でしたが、美しい和声に魅了され弾くほどにその音楽の魅力を感じました。
セミファイナルは50分以内のプログラムで、これまでで最も長い本番となり大きな挑戦となりました。
ファイナルは別会場で行われ、翌日にミラノで授賞式とレセプションが開かれました。
地域全体がコンクールを支えているような温かい雰囲気の中、世界各国から集まったハイレベルな出場者の演奏を間近で聴くことができ、大変刺激的で学びの多い経験となりました。また、自分自身の課題や今後の方向性を改めて見つめ直す機会にもなりました。


今回は初めて「30歳まで」を対象とした国際コンクールへの挑戦で、当初は一次通過を目標としておりましたが、思いがけずセミファイナルまで進むことができ、さらに最年少特別賞をいただくことができてとても嬉しく思いました。
全てのスケジュールを終え、帰国前日はフライトの都合で1日だけ自由時間がありましたので、美術館や教会、オペラ座を訪れました。重厚な建築物が立ち並ぶ街を歩きながら、西洋の美術や宗教の世界に触れた事で大きな感動を覚え、今後歴史についてもさらに学んでいきたいと感じました。


このような貴重な経験をさせていただけたのは、終始温かくご指導やサポートをして下さった黒田亜樹先生、そして福田靖子賞基金の皆様のお陰です。心より感謝申し上げます。また日頃より熱心にご指導して下さっている先生方、大学で応援して下った皆様にも心より御礼申し上げます。
これからも音楽の研磨を重ねるとともに、様々な分野にも目を向け、人としても成長していけるよう精進してまいります。
角谷 春奈

